通常上映

安住の地を求めて ~アジア映画が描くディアスポラ・民族離散~

難民や国内避難民、そして故郷を離れ苦悩する人々を描いたアジア映画を特集。
福岡市総合図書館収蔵作品の上映。

会期:4月5日(水)~30日(日)※休館日・休映日除く
観覧料:500円(大人)400円(大学生・高校生)300円(中学生・小学生)

※定員制。各回入替制。
※チケットはすべて当日券。前売り券はありません。(チケットの販売は上映の1時間前からです。)
※障がい者の方は無料。福岡市在住の65歳以上の方は250円。(手帳や保険証などの原本の提示が必要です。)
※「わたすクラブ」会員の方は250円。(会員証の原本の提示が必要です。)


安住の地を求めて

「私は父母とはずっと会ってない/小さい頃からね/いつも居場所がなかった/バラックに住んでも/テントにいても/難民キャンプでも/私は“家”の意味を知らない」
 『ティモール島アタンブア39℃』(2012年インドネシア)の中で、難民キャンプで暴行を受けた過去に苦しむニキーアは、彼女に好意を寄せる主人公ジョアオに向けて語りかけます。
 難民や国内避難民など、世界で紛争や迫害、暴力や貧困によって故郷を離れた人は、2021年末時点で8,900万人を超え、その数は2011年当時の約2倍に達しています。そして今では、ウクライナや各地での人道危機により、1億人以上、つまり世界の80人に1人が故郷を追われるという苦境に立たされています。
 アジア太平洋地域は、2014年まで世界で最も多くの難民を抱える地域でした。2021年時点でも420万人に上り、世界の難民数の16%を占めています。アジアでは、民族離散や、故郷を追われ望まない旅を強いられる人々の悲劇が繰り返され、この問題はアジア映画において社会の根底にある大きなテーマとして描かれてきました。
 今月上映の13作品は、故郷、そして自らのアイデンティティを失い、安住の地-ニキーアの言う“家” -を探し求める人々の姿を強く映し出しています。
(参考:UNHCR「グローバル・トレンズ・レポート 2021」)


追われた人々 The Dispossessed
監督:G.アラヴィンダン 出演:モーハンラール ニランシュナー・ミトラ




4月5日(水)11:00
4月13日(木)14:00
4月23日(日)11:00

1990年 35ミリ カラー 101分 インド 日本語字幕付き

ヴェヌはカルカッタの役人で、東ベンガルからの難民を入植させるため毎日面接を行っていた。ある日彼はアルティという女性と出会う。彼女は未亡人で、夫が革命家であったため故郷を離れてカルカッタで暮らしていた。ケーララ州は多くの共産主義者を生んだ土地であり、その活動の挫折により故郷を離れた人たちを、インド・パキスタンの分離により難民となった人々と重ねるように描いた作品。ヴェヌを演じるモーハンラールは、ケーララ州映画界の大スターであり、この作品はインド映画の巨匠アラヴィンダン監督の遺作となった。


少女ヘジャル  Hejar
監督:ハンダン・イペクチ  出演:ディラン・エルチェティン シュクラン・ギュンギョル




4月5日(水)14:00
4月14日(金)11:00
4月22日(土)11:00

2001年/35ミリ/カラー/120分/トルコ/日本語・英語字幕付き

家族を亡くした5歳のクルド人少女ヘジャルは、イスタンブールの親戚に預けられる。しかしその親戚の家が突然警察に襲撃され、ヘジャルは隣人宅に隠れる。そこには75歳の元判事ルファトが住んでいるが、ルファトはクルド語が話せず二人は会話が通じないのだった。トルコにおけるクルド人との内戦を背景に、ヘジャルとルファトの心の交流に平和を願う監督の気持ちが込められた作品。クルド問題を題材としていることから、トルコでは公開から5か月後に政府から上映停止処分が下ったが、その後取り消され、再上映が実現した。

バラン(少女の髪どめ) Baran
監督:マジド・マジディ  出演:ホセイン・アベディニ  ザーラ・バラミ




4月6日(木)11:00
4月14日(金)14:00
4月23日(日)14:00

2001年/35ミリ/カラー/96分/イラン/日本語・英語字幕付き

17才の青年ラティフはテヘランのビル建設現場で働いていた。ある日、不法労働者であるアフガニスタン人が怪我をして、代わりに息子のラーマトが現場にやって来る。小柄なラーマトに、親方はラティフが受け持っていたお茶くみや買い物の係を担当させ、ラティフには力仕事を命じる。不満を募らせ憤るラティフだが、思いがけずラーマトの秘密を知ることに…。イランにおけるアフガニスタン人難民の不法労働問題を取り上げた傑作。第25回モントリオール世界映画祭でグランプリを受賞。

少女ジヤーン Life / Jiyan
監督:ジャノ・ロジェビアーニー  出演:クルド・ガラーリ ピシング・ベルゼンジ




4月6日(木)14:00
4月15日(土)14:00
4月27日(木)11:00

2002年 35ミリ カラー 99分 イラク 日本語・英語字幕付き

クルド系アメリカ人デイヤーリは、クルド人居住地ハラブジャに孤児院を建てるためにやって来る。彼はそこで両親を亡くし顔に火傷の跡を持つ10歳の少女ジヤーンに出会う。イラン・イラク戦争末期、フセイン政権が行ったクルド人への化学兵器の使用、その後遺症に苦しむ人々が描かれる一方、クルド民族の詩や音楽など、独自の文化が丁寧に表現されている。2002年、シアトル国際映画祭他で受賞。

裸足でヘラートまで Barefoot to Herat
監督:マジド・マジディ




4月9日(日)14:00 ※9日のみ、上映前に当館の映像調査専門員による4月上映企画についての解説あり(約30分間)
4月15日(土)11:00
4月26日(水)14:00

2002年/デジタル/カラー/65分/イラン/日本語・英語字幕付き

2001年アメリカはアフガニスタンヘの空爆を開始、戦争状態に突入する。マジディ監督は2001年~2002年の間に3度アフガニスタンを訪れ、難民キャンプや兵士たちの様子など、様々な映像を記録した。本作では、わずかなパンを求めて一日中歩く子どもたちや、家そして家族も失い、飢えや寒さに苦しみつつも、逆境の中で努力を重ねる人々の姿が映し出される。アフガニスタンの現状を全世界に伝えたいというマジディ監督の思いが込められたドキュメンタリー作品。

見知らぬ国で Hello, Stranger
監督:キム・ドンヒョン  出演:パク・インス チェ・ヒジン




4月7日(金)14:00
4月16日(日)11:00
4月29日(土)11:00

2007年/35ミリ/カラー/112分/韓国/日本語・英語・ハングル字幕付き

脱北者のジヌクは韓国で社会に適応するための教育を受け、ソウルで一人暮らしを始める。しかし不慣れな生活ゆえに、買い物に出ただけで帰り道に迷ってしまう。ある日彼はプサンに住む仲間に会いに行くが、バスの中でベトナム人の不法移民労働者ティンユンと出会う。ティンユンは韓国に行ってしまった恋人のイエンを探しに来たのだが、韓国語も話せず途方に暮れていた。孤独な二人は、言葉が通じないながらも旅を共にすることとなる。第12回釜山国際映画祭でNETPAC賞を受賞。

難民キャンプ The Misfits
監督:レイス・チェリッキ  出演:ルク・ピエス デルヤ・ドゥルマズ




4月8日(土)11:00
4月16日(日)14:00
4月27日(木)14:00


2008年 35ミリ カラー 107分 トルコ 日本語・英語字幕付き

トルコ北東部の農村に住むクルド人青年シヴァンは、放火の疑いをかけられ、ゲリラとの関係を憲兵に尋問される。父親は息子を守るため、ブローカーに頼んでシヴァンを亡命させ、シヴァンはドイツの難民キャンプで様々な国から来た難民と出会い生活を共にする。監督が実際に多くの難民キャンプを取材して製作した作品。主人公が精神的に追い詰められていく様がリアルに描かれる。ブカレスト国際映画祭で最優秀作品賞を受賞。

豆満江(とまんこう) Dooman River
監督:チャン・リュル 出演:ツイ・ジエン イン・ラン




4月8日(土)14:00
4月20日(木)11:00
4月26日(水)11:00

2010年 35ミリ カラー 92分 韓国=中国 他 日本語・英語字幕付き

12才の少年チャンホは北朝鮮との国境である川・豆満江に近い中国の村に暮らしていた。ある日チャンホは同じ年の北朝鮮の少年ジョンジンと出会う。ジョンジンは妹が病気のため、いつも危険を冒して川を渡ってきていたのだ。友達となった二人だが、村では北朝鮮からの避難民への反発が強まる。同じ民族でありながら中国と北朝鮮に別れて暮らす人々の悲哀を、二人の少年を中心に描いた作品。釜山国際映画祭、ベルリン国際映画祭等において数々の賞を受けた。

未来へつづく声 Future Lasts Forever

監督:オズジャン・アルペル  出演:ガイエ・ギュルセル ドゥルカン・オルドゥ




4月9日(日)11:00
4月21日(金)11:00
4月28日(金)14:00

2011年/35ミリ/カラー/113分/トルコ/日本語・英語字幕付き

イスタンブールの大学の研究者であるスムルは、民族音楽、特に長年の迫害に苦しむクルド人が歌うアナトリアの哀歌を調査していた。デイヤルバクルの町に来たスムルは、フィルムライブラリーのアフメットや朽ち果てた教会の管理人らに出会うが、常にスムルの中には行方不明となったクルド人の元恋人への想いがあった。クルド人への迫害だけでなく、トルコの歴史の中で犠牲になってきた多くの民族への哀悼に満ちた、悲しくも静譴な作品。

ティモール島アタンブア39℃  Atambua 39°Celsius
監督:リリ・リザ  出演:グディーノ・ソアレス ペトゥルス・ベイレト




4月7日(金)11:00
4月19日(水)14:00
4月30日(日)11:00

2012年 デジタル カラー 90分 インドネシア 日本語・英語字幕付き

ジャワ島の東にあるティモール島。島の半分はインドネシア、半分はインドネシアから独立した東ティモールとなり、2002年の独立後多くの難民がインドネシアの町アタンブアに押し寄せた。ロナルドとジョアオの父子はアタンブアに移住したが、二人は不仲であり、ジョアオは東ティモールに暮らす母たちにいつも思いを馳せていた。インドネシア現代史の傷を抱えた土地を舞台に、一つの家族の物語が描かれていく。世界的に高い評価を受ける名匠リリ・リザ監督による作品で、ドキュメンタリー的な手法でアタンブアの町と歴史が映し出される。

インビジブル Invisible
監督:ローレンス・ファハルド 出演:アレン・ディソン セス・サケダ




4月12日(水)14:00
4月21日(金)14:00
4月29日(土)14:00

2015年 デジタル カラー 134分 フィリピン=日本 日本語・英語字幕付き

日本で暮らすフィリピン人労働者のベンジーは、故郷への仕送りのため、昼は工場、夜はバーで働くという過酷な生活を送っている。日本人の夫を持ち、アパート経営を通して同郷者を助けようとするリンダや、ホストとしてフィリピン・パブで働きながらも借金を抱えるマヌエル、そして若い建設作業員のロデル。日本での厳しい生活に苦しみ、また不法滞在の現実から逃れることができず追い詰められる中、ついにある事件が起きてしまう。シナッグ・マニラ映画祭の7部門を制覇した作品。

国のない国旗 A Flag without a Country
監督:バフマン・ゴバディ  出演:ナリマン・アンワール ヘリー・ラウ




4月12日(水)11:00
4月20日(木)14:00
4月28日(金)11:00

2015年 デジタル カラー 92分 イラク 日本語・英語字幕付き 

足を負傷したパイロットのナリマンは、難民キャンプの子どもたちを集めて飛行機を組み立て、パイロットを養成しようとする。イラクに生まれ、米国で成功した歌手のヘリー・ラウは新曲の撮影に出演するキャンプの子どもたちを探し、コンサートを開催しようとする。ナリマンとヘリー・ラウの二人は実在のクルド人であり、彼らの物語をドラマとドキュメンタリーを織り交ぜて描いた作品。イスラム過激派組織ISISとの戦闘が始まり、彼らと戦うクルド人の現状、国を持たないクルド人の想いを圧倒的迫力で描く。


僕の帰る場所  Passage of Life
監督:藤元明緒 出演:カウン・ミャッ・トウ ケイン・ミャッ・トウ




4月13日(木)11:00
4月22日(土)14:00
4月30日(日)14:00

2017年 デジタル カラー 98分 日本=ミャンマー 日本語・英語字幕付き

東京のアパートにミャンマー人の4人家族が暮らしていた。ある日父親のアイセが入国管理局に拘束されてしまう。母親ケインはカウンとテツという二人の幼い子どもたちを懸命に育てるが、将来への不安からミャンマーへの帰国を考えるようになる。二つの国の間で揺れ動く「難民申請中」のミャンマー人一家を繊細に描いた物語。長編初監督作品ながら、数々の国際映画祭で上映され、東京国際映画祭他で受賞した。

上映スケジュール

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