通常上映

映画の中の食卓

総合図書館収蔵作品の中から食卓にまつわるシーンが印象的な作品を特集。

会期:5月3日(水・祝)~27日(土)※休館日・休映日除く
観覧料:500円(大人)400円(大学生・高校生)300円(中学生・小学生)

※定員制。各回入替制。
※チケットはすべて当日券。前売り券はありません。(チケットの販売は上映の1時間前からです。)
※障がい者の方は無料。福岡市在住の65歳以上の方は250円。(手帳や保険証などの原本の提示が必要です。)
※「わたすクラブ」会員の方は250円。(会員証の原本の提示が必要です。)


食卓のまわりにあるもの
どんなに短いシーンであれ、映画の中の食卓のまわりは、何気ないエピソードの連なりで溢れ、登場人物たちの生活を表現しています。賑やかな食卓、誰かのためにつくる料理、夕飯の匂い、味わい深い食事の時間。そこから生まれる細やかな描写の数々が、映画の中にある日常生活の質感を彩ります。
『隣の八重ちゃん』(1934年/日本) には、大学生の恵太郎が隣に住む女学生・八重子の家に(口笛を吹きながら!)上がりこみ、八重子の母に食事を甘えるシーンがあります。「お茶漬けでいいや」と言う彼に、八重子の母は「遠慮なく召し上がれ」とありもののおかずやお櫃のままご飯を用意してあげるのです。この短いやりとりと、隣の家でひとり遠慮なく食事をする恵太郎の描写だけで、このふたりと両家の親密さが一瞬で読み取れるように、食卓風景は登場人物たちの性格や人間関係について多くの情報をあたえてくれます。『ママのお客』(2004年/イラン)は、急なお客さまを精一杯のもてなしで迎えたいがために奮闘する家族の物語。『生きていく日々』(2007年/香港=中国)は、未亡人となった中年女性と高校生の息子との生活を淡々と描いたアン・ホイ監督の代表作です。一方はテヘランの下町の集合住宅、もう一方は香港の郊外住宅地での暮らしを優しく見つめたアジア映画の名作です。
「映画の中の食卓」と題した今月のプログラムは、収蔵作品の中から食卓にまつわるシーンが印象的な17作品を上映します。このテーマをきっかけにアジア映画、日本映画の名作をお楽しみいただければ幸いです。


隣の八重ちゃん
監督:島津保次郎 出演:岩田祐吉 飯田蝶子




5月3日(水・祝)14:00
5月13日(土)11:00

1934年 16ミリ モノクロ 77分 松竹キネマ(蒲田)

東京の郊外。新井家には帝大生の恵太郎と中学生の精二がいた。隣の服部家には女学生の八重子がおり、八重子と精二は兄妹のような仲だった。ある日結婚して家を出た八重子の姉・京子が帰って来る。日常のリアリズム描写に定評のある島津監督初のトーキー作品。「あの時代の日本映画にはない新鮮な若さを吹き込んだ点でまさに記念すべき作品」と評価されている。


二人妻 妻よ薔薇のやうに 
監督:成瀬巳喜男 出演:千葉早智子 丸山定夫




5月4日(木・祝)11:00
5月18日(木)11:00

1935年 35ミリ モノクロ 74分 P.C.L映画製作所

君子の父・俊策は砂金を探して山に入り、芸者上りのお雪と暮らしていた。君子は格式ばかりを重んじる母・悦子にも、帰宅しない父にも怒りを覚えており、俊策を連れ戻しに山に行く。原作は中野実の「二人妻」。監督は俊策、悦子、お雪の立場を平等に扱いそれぞれの生き方として肯定している。女性映画の巨匠・成瀬監督の戦前の代表作の一本。
※作品が古いため状態が良くありません。ご了承ください。

麥秋
監督:小津安二郎 出演:笠智衆 原節子




5月4日(木・祝)14:00
5月17日(水)14:00

1951年 35ミリ モノクロ 125分 松竹(大船)

間宮紀子は28歳のOL。ある日伯父から縁談を持ちかけられる。会社の上司の佐竹からも見合いを勧められる。間宮家は紀子の結婚を巡ってちょっとした騒ぎになる。しかし最後に紀子が結婚を決意したのは意外な人物だった。名作「晩春」のスタイルを踏襲しながら、登場人物を増やした作品。「晩春」「東京物語」と並んで小津の代表作とされる作品で、小津の最高傑作という評価もある名作。

夫婦善哉
監督:豊田四郎 出演:森繁久彌 淡島千景





5月5日(金・祝)14:00
5月18日(木)14:00

1955年 35ミリ モノクロ 120分 東宝

昭和7年の大阪。芸者の蝶子は妻子ある化粧問屋の若旦那・柳吉と駆け落ちする。柳吉は勘当され、二人は生活に困ってしまう。甲斐性のない柳吉のために尽くす蝶子だが、柳吉はいつか勘当がとけるとタカをくくっていままで同様に遊びまわる。主役の森繁久彌と淡島千景の息の合ったコンビが素晴らしく森繁の代表作の1本。また豊田監督の代表作でもあり、本作で文芸映画の監督の地位を不動のものにした。

筑豊のこどもたち
監督:内川清一郎 出演:加東大介 沖村武




5月5日(金・祝)11:00
5月19日(金)11:00

1960年 35ミリ モノクロ 106分 東宝=日本映画新社

失業者があふれる筑豊の炭鉱地帯。子どもたちは食事の糧にザリガニ捕りに走り廻り、ボタ拾いなどをして修学旅行のお金を工面しようとする。最後は「黒い羽根運動」の募金で大阪に修学旅行に行くが、貧しい自分たちをみじめに感じてしまう。土門挙の写真集「筑豊のこどもたち」に触発され製作された作品。実際に筑豊で撮影されており、挿入されている労働争議等の記録映像も含めて昭和30年代前半の筑豊地方の様子をリアルに伝えている。

砂の女
監督:勅使河原宏 出演:岸田今日子 岡田英次




5月6日(土)14:00
5月19日(金)14:00

1964年 35ミリ モノクロ 147分 勅使河原プロダクション

ある教師が砂地に棲む昆虫を探しにやって来る。夜になり、教師は穴の底に住む女の家に泊まる。翌朝教師は家を出ようとするのだが、ハシゴがなくなっており出られなくなってしまう。原作は安部公房の代表作であり、安部公房の名を世界に知らしめた傑作。安部公房自身が脚本を書き、外界と隔絶した不条理な世界の男女関係を映像化している。

サンダカン八番娼館 望郷 
監督:熊井啓 出演:栗原小巻 田中絹代 高橋洋子




5月7日(日)14:00
5月24日(水)14:00


1974年 35ミリ カラー 121分 東宝=俳優座

女性史研究家・三谷圭子は天草に「からゆきさん」の調査にやって来る。彼女は老婆サキと出会う。サキは昔「からゆきさん」だったと確信する圭子はサキの家で寝食を共にする。やがてサキは自らのつらい過去を語り始める。原作は山崎朋子の「サンダカン八番娼館」。明治終わりから第1次世界大戦にかけて娼婦として南洋に送られた女性たちを描いた感動作。サキを演じた田中絹代はベルリン映画祭女優演技賞を受賞。第48回キネマ旬報日本映画ベストテン第1位。

泥の河
監督:小栗康平 出演:田村高廣 加賀まりこ




5月7日(日)11:00
5月20日(土)11:00

1981年 35ミリ モノクロ 105分 木村プロダクション

昭和31年の大阪。食堂を営む板倉夫妻の息子・信雄は、ある日喜一という少年と知り合う。喜一は姉・銀子と母親と一緒に川に浮かぶ舟に住んでいた。信雄の両親は喜一と銀子を夕食に招き優しくもてなすのだった。原作は宮本輝の同名小説。本作は小栗康平監督のデビュー作であり、戦後の一風景をモノクロの端正な映像で見事に描き出す。モスクワ映画祭銀賞などを獲得。小栗監督の出世作となった。

家族ゲーム
監督:森田芳光 出演:松田優作 伊丹十三




5月6日(土)11:00
5月21日(日)11:00

1983年 35ミリ カラー 106分 にっかつ撮影所=ニューセンチュリー・プロデューサーズ=ATG 

沼田家では高校受験を控えた息子の茂之のために家庭教師をつける。ところがやって来たのは三流大学の7年生という変わり者の吉本。父親から成績が上がれば特別報酬を払うと言われ、吉本は暴力的に茂之を教え始める。奇妙な家族関係をシュールに描いた一種のコメディーであり、大評判となった森田芳光監督の出世作。家族揃って長いテーブルに横一列に並ぶ食卓の様子は、本作を象徴する名シーンとして公開時から話題になった。

恋人たちの食卓  Eat Drink Man Woman
監督:アン・リー 出演:ロン・ション ウー・チェンリェン




5月10日(水)14:00
5月21日(日)14:00

1994年 35ミリ カラー 124分 台湾 日本語・英語字幕付き

高級ホテルのシェフだったチウは、妻を亡くし男手一つで娘3人を育てた。娘3人は独身で適齢期を迎えていた。ある日隣に未亡人が越してきて、チウの家にもよく訪れるようになる。豪華な料理から家庭料理まで、様々な中華料理が登場するグルメ映画であり、父親と娘3人をめぐる恋愛コメディーでもある。監督は「シェフがご馳走を作るように、この映画を作った」と語る。

フラワーズ・オブ・シャンハイ Flowers of Shanghai
監督:ホウ・シャオシェン 出演:トニー・レオン 羽田美智子




5月12日(金)14:00
5月20日(土)14:00

1998年 35ミリ カラー 121分 台湾=日本 日本語字幕付き

19世紀末。上海の英国租界にある遊郭。高級官僚のワンは遊女のシャオホンと出会い熱烈な恋愛をする。ワンはシャオホンを身請けしたいと思うのだが、シャオホンはなかなか承諾しない。映画に登場するのは3組のカップルであり、微妙な恋模様が描かれる。映画の舞台は遊郭の中に限定され官能的な雰囲気を醸し出す。ホウ・シャオシェン監督の映画芸術の極致のような作品。

チキンライス・ウォー Chicken Rice War
監督:チーク 出演:ピエール・プン ラム・メイイー




5月13日(土)14:00
5月25日(木)11:00

2000年 35ミリ カラー 100分 シンガポール 日本語・英語字幕付き 

ウォン家とチャン家は隣り合わせでチキンライスの店を出しており、仲が悪かった。ウォン家の長男フェンソンはチャン家の長女オードリーと同じ大学で、二人とも演劇部に所属していた。演劇部の次の出し物は「ロミオとジュリエット」で、フェンソンとオードリーが主役を演じることになる。「ロミオとジュリエット」を下敷きにしたラブ・コメディ。ハイテンポな演出も見事な娯楽作品。


アメリカンアドボ  American Adobo
監督:ローリス・ギリエン 出演:クリストファー・デ・レオン リッキー・ダバオ




5月14日(日)11:00
5月25日(木)14:00

2002年 35ミリ カラー 104分 フィリピン 日本語・英語字幕付き

テレ、マイク、ジェリー、マリーサ、クリスの5人はニューヨークに暮らすフィリピン人。彼らはそれぞれに問題を抱えながらも、折にふれホームパーティーを開き、人生やフィリピンについて語り合うのだった。在米フィリピン人を描いた珍しい作品で、アメリカで初めてロードショーされたフィリピン映画。

ママのお客 Mama's Guest
監督:ダリユシ・メヘルジュイ 出演:ゴブラ・アディネ ハサン・ブールシラズィ




5月14日(日)14:00
5月26日(金)11:00

2004年 35ミリ カラー 108分 イラン 日本語・英語字幕付き

母親の甥のハミドと彼の新妻が訪ねてくる。その日母親は体調が良くないのだが、遠来の客のために精一杯の食事を作ろうとする。しかし夫はもう何か月も給料をもらっていない。母親は近所の人に助けを求め、食事の準備を始める。舞台となる集合住宅は、イランの庶民が住むもの。日本の長屋物のような人情味あふれる作品。遠来の客をもてなすのはイランの伝統的な考え方で、庶民の善意が微笑ましい傑作である。


無窮動 Perpetual Motion
監督:ニン・イン 出演:ホン・ホワン リウ・ソラ




5月11日(木)11:00
5月26日(金)14:00

2005年 35ミリ カラー 90分 中国 日本語・英語字幕付き

ニウニウは40代で女性雑誌の編集長。夫は有名な小説家だが、ニウニウは夫の浮気を疑う。浮気の相手は自分の友人の一人とにらんだニウニウは、疑わしい3人を食事に招き、様々な質問を投げかける。女性監督ニン・インが描く女性の心の裏側。4人の女性による毒のある会話。果たして浮気相手はだれか。サスペンスタッチの展開と意外な結末にも毒がある。

生きていく日々 The Way We Are
監督:アン・ホイ 出演:リョン・チョンルン パウ・ヘイチン




5月11日(木)14:00
5月27日(土)11:00

2007年 デジタル カラー 90分 香港=中国 日本語・英語字幕付き

未亡人クワイと高校生の息子ガーオンは、香港の都心から離れた団地で暮らしていた。クワイは近所のスーパーで果物を販売していたが、ある日近所に住む一人暮らしの老女と知り合い次第に家族のような関係になっていく。平凡で淡々とした日常生活の描写の積み重ねの中に、ほのかに優しい人間関係が描かれる作品。小津安二郎作品を思わせるアン・ホイ監督の傑作。

4月の終わりに霧雨が降る In April the Following Year, There Was a Fire
監督:ウイチャノン・ソムウムジャーン 出演:ウテン・シリウィ ジンナパット・ラダーラット




5月12日(金)11:00
5月27日(土)14:00

2012年 デジタル カラー 76分 タイ  日本語・英語字幕付き

バンコクで働くヌムは、故郷のタイ東北部にあるコンケーンに帰り、気心の知れた友人たちとのんびりとした時間を過ごしていた。ある日友人の結婚式に出席し、高校時代の同級生ジョーイと再会する。ヌムはかつて彼女に好意を寄せていた。ヌムの物語と監督自身の昔話が交錯するように語られる奇妙な感覚の作品。2012年ロッテルダム国際映画祭コンペティション部門出品作。

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