企画上映
暮らしの思想
佐藤真 RETROSPECTIVE
17年前、49歳で突然この世を去った稀代のドキュメンタリー作家 佐藤真。アート、パレスチナ、記憶、様々なテーマを通じて佐藤が見つめた彼方とは――。映画史に燦然と輝く傑作の数々がレストアでいま蘇る。
会期:1月8日(水)~1月19日(日) ※休館・休映日除く
配給:ALFAZBET、パラブラ(「おてんとうさまがほしい」を除く)
観覧料:
大人=1400円/学生(大学生・高校生・中学生・小学生)および各種割引=700円
※以下の方が割引となります(要証明書・会員証原本提示)
①福岡市在住の65歳以上の方②「わたすクラブ」会員③障がい者の方および介護者の方1名
バリアフリー上映について:
「まひるのほし」「花子」「エドワード・サイード OUT OF PLACE」は日本語字幕付きで上映します。また音声ガイドはUDCastMOVIEアプリに対応しています。詳しくはUDCastのホームページ をご覧ください。 |
佐藤真(さとう・まこと)
1957年青森県生まれ。東京大学文学部哲学科卒業。大学在学中より水俣病被害者の支援活動に関わる。1981年「無辜なる海」(香取直孝監督)に助監督として参加。1989年から新潟県阿賀野川流域の民家に住み込みながら撮影を始め、1992年「阿賀に生きる」を完成。ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭銀賞など、国内外で高い評価を受ける。以降「まひるのほし」(1998)、「SELF AND OTHERS」(2000)、「花子」(2001)、「阿賀の記憶」(2004)、「エドワード・サイード OUT OF PLACE」(2005)など映画監督として数々の作品を発表しながらテレビ作品の編集・構成の他、映画論の執筆など多方面に活躍。京都造形芸術大学教授、映画美学校主任教師として後進の指導にも尽力した。2007年9⽉4⽇逝去。享年49。 |
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©村井勇
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「おてんとうさまがほしい」について
「暮らしの思想 佐藤真 RETROSPECTIVE」では、特別に「おてんとうさまがほしい」という映画を上映します。本作のフィルムは所在がわからなくなっていましたが、関係者の方たちは長年探され、新潟で、今回上映する「阿賀に生きる」の製作発起人である旗野秀人さんが保管されていた上映用の16ミリフィルムが見つかりました。すでにデジタル化された上映素材も存在しているのですが、1月11日は、その貴重な16ミリフィルムで上映します。
作品紹介文にも記したとおり「おてんとうさまがほしい」には、「監督」とクレジットされるスタッフはいません。製作・撮影・照明の渡辺生さんは被写体となったトミ子さんの夫で、ナレーションにも渡辺さんの声が吹き込まれています。構成・編集(このクレジットは日本のドキュメンタリー映画では伝統的に、監督に近い立場として使用されていますが)とクレジットされた佐藤真さんが、渡辺さんが撮影された素材を編集し、一本の作品にまとめました。
当事者といえる渡辺さんが撮影した映像は、連れ添った妻を長年見つめてきた時間の積み重ねと、親密な距離感をひしひしと感じさせてくれます(病が進行していく様子を渡辺さん自身が撮影することの苦悩も少しナレーションで触れています)。本編には、歌っているシーンがとても多いのですが、音楽もたくさん使用して、ほっとするような自然の風景や昔のトミ子さんやふたりの写真も織り交ぜながら、そして過度に一般化も個別化・差別化もせず、カメラがとらえたものを奇をてらわず、見る側にそっと差し出してくれます。
上映時間1時間満たない小品ですが、佐藤真さんの視点によって紡がれた映像が、どのように映画に至るのか、そのヒントが垣間見える作品でもあります。上映後には、佐藤真さんに影響を受けた3人によるトークもあります。ぜひご来場ください。(学芸員・杉原)
特別上映 1/11(土)17:00
「おてんとうさまがほしい」+上映後トークイベント
おてんとうさまがほしい
1994/日本(おてんとうさまがほしい制作委員会)/47分/カラー/16ミリフィルム上映
製作・撮影・照明:渡辺 生
構成・編集:佐藤 真
プロデューサー : 貞末麻哉子
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写真提供:貞末麻哉子 |
フリーの映画照明技師である渡辺生(わたなべ・しょう)さんは、半世紀以上を映画界で生きてきた。1990年2月、妻・トミ子さんの骨折による入院をきっかけに、渡辺さんは東京の仕事場を引き払い、生活の基盤を日立市に移す。そして翌年トミ子さんはアルツハイマー病と診断される。その妻に、夫である渡辺さんがカメラを向けた。看病の日々を通して知り合った周囲の人々の姿とともに、 渡辺さんはトミ子さんの日常を撮り続けていく。撮影されたフィルムは佐藤真氏によって構成・編集された。
上映後 トークイベント(17:50-18:50予定)
小森はるか(こもり・はるか)
映像作家。1989年静岡生まれ。瀬尾夏美とのアートユニットやNOOK(のおく)のメンバーとしても活動。2011年以降、岩手県陸前高田市や東北各地で、人々の語りと風景の記録から作品制作を続ける。現在は新潟在住。代表作に「息の跡」(2016)、「空に聞く」(2018)。小森はるか+瀬尾夏美として2014年に「波のした、土のうえ」を制作、2019年に発表した「二重のまち/交代地のうたを編む」は、シェフィールド国際ドキュメンタリー映画祭コンペティション部門特別賞、令和3年度文化庁映画賞文化記録映画優秀賞を受賞。最新公開作品に「ラジオ下神白」(2023)。 |
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飯岡幸子(いいおか・ゆきこ)
1976年福岡県宗像市生まれ。映画美学校ドキュメンタリーコースにて佐藤真氏に師事し、映像制作を始める。監督作に「オイディプス王/ク・ナウカ」(2000)、「ヒノサト」(2002)。撮影を担当した作品に、森井勇佑監督「ルート29」(2024)、清原惟監督「すべての夜を思いだす」(2022)、濱口竜介監督「偶然と想像」(2021)など。2024年には井戸沼紀美と共同で特集上映「日々をつなぐ」を企画、東京、大阪、京都で上映活動を行った。
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清田麻衣子(きよた・まいこ)
1977年生まれ。編集プロダクション、出版社勤務を経て、2012年里山社設立。2016年、佐藤真に惹きつけられた32人の書き下ろし原稿とインタビュー、佐藤真の単行本未収録原稿を含む傑作選を収録した「日常と不在を見つめて〜ドキュメンタリー映画作家 佐藤真の哲学〜」を出版。佐藤真の教え子らとともに、刊行記念特集上映会 「佐藤真の不在を見つめて」を全国で上映。2021年、「佐藤真の不在との対話 ー見えない世界を撮ろうとしたドキュメンタリー映画作家のこと」を刊行した。2022年より福岡市在住。
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1/8水14:00 1/11土14:00 1/19日14:00
※1/19(日)14:00 中東情勢と映画の背景について聞く
上映前トークイベント(14:00-14:30予定)
登壇:中野真紀子(なかの・まきこ)「デモクラシー・ナウ!ジャパン」代表、翻訳業。「エドワード・サイード OUT OF PLACE」の字幕翻訳を担当。
聞き手:清田麻衣子(里山社)
エドワード・サイード OUT OF PLACE
Out of Place: Memories of Edward Said
2005/日本(シグロ)/137分/カラー//DCP(4K修復)上映
監督:佐藤真 撮影:大津幸四郎、栗原朗、佐藤真 整音:弦巻裕 編集:秦岳志 |
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©2005 シグロ
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パレスチナの窮状を全世界に示し、生涯にわたりパレスチナ問題に向き合い続けたエドワード・サイード。生誕の地エルサレムではないレバノンのブルンマーナに、サイードの墓はつくられた。彼の不在をみつめ、イスラエル・アラブ双方の知識人たちの証言を道標に、サイードが求め続けた和解と共生の地平を探る渾身のロードムービー。
1/10金11:00 1/12日14:00 1/16木11:00
阿賀に生きる Living on the River Agano
1992/日本(阿賀に生きる製作委員会)/115分/カラー/DCP上映
監督:佐藤真
撮影:小林 茂
音楽:経麻朗
録音:鈴木彰二
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©️1992 阿賀に生きる製作委員会 |
新潟県を流れる阿賀野川。新潟水俣病の舞台ともなった川。川筋に住む人びとは愛情を込めて「阿賀」と呼ぶ。七⼈のスタッフがその川筋に住み込み、そこに住む⼈びとを三年間にわたって撮影した。 阿賀に暮らす人と風土をまるごとフィルムに収めた長編デビューにして、ドキュメンタリー映画の金字塔。
1/11土11:00 1/13月祝14:00 1/17金11:00 1/18土14:00
まひるのほし Artists in Wonderland
1998/日本(「まひるのほし」製作委員会)/93分/カラー/DCP(4K修復)上映
監督:佐藤真
撮影:大津幸四郎
撮影監督:田島征三
録音:久保田幸雄
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©1998 「まひるのほし」製作委員会 |
本作に登場する7人のアーティストは知的障害者と呼ばれる人たちでもある。兵庫県西宮の武庫川すずかけ作業所、神奈川県平塚の工房絵(かい)、滋賀県信楽の信楽青年寮を舞台に、それぞれ独特のこだわりを生かして創作に取り組む彼らの活動を通し、 表現の快楽、芸術表現の根底に迫る傑作。タイトルには「真昼には見えなくてもそこに燦然と輝いている星がある」という思いがこめられている。
1/9木14:00 1/18土11:00
SELF AND OTHERS
Self and Others
2000年/日本(ユーロスペース)/53分/カラー/DCP上映
監督:佐藤真
撮影:田村正毅
録音:菊池信之
音楽:経麻朗
声:西島秀俊
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©牛腸茂雄
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わずか3冊の写真集を自費出版し亡くなった写真家・牛腸茂雄。「SELF AND OTHERS」は彼の2冊目の写真集のタイトルでもある。牛腸のゆかりの地を訪れ、残された手紙や写真をコラージュしながら牛腸の写真の魅力に迫っていく。ドキュメンタリー映画の新たなイメージを提⽰する衝撃の映画。孤独な命が全世界へ向けて声を発しているような生々しさが胸を打つ。
1/9木11:00 1/12日11:00 1/17金14:00 1/19日11:00
花子 Hanako
2001/日本(シグロ)/60分/カラー/DCP(4K修復)上映
監督:佐藤真
撮影:大津幸四郎
音楽:忌野清志郎/ラフィータフィー
録音:弦巻裕
編集:秦岳志
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©2001 シグロ |
京都府の南端、⼤⼭崎町に暮らす今村花子は、夕食の残り物を素材にした「たべものアート」の作家である。このユニークなアートの発⾒者である母・知左は、6年に渡って花子の「作品」を写真に撮り続けてきた。一人のアーティスト今村花子と、彼女を取り巻く家族の物語。一人のアーティストと家族が緩やかにつながって暮らす姿が、ときにユーモアをにじませながら淡々と描かれる。
1/10金14:00 1/13月祝11:00
1/16木14:00
阿賀の記憶
Memories of Agano
2004/日本(カサマフィルム)/55分/カラー/DCP上映
監督:佐藤真
撮影:小林 茂
録音:菊池信之
音楽:経麻朗
編集:秦岳志
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©️2004 カサマフィルム |
『阿賀に⽣きる』から10年。映画に登場した愛すべき⼈びとの多くはこの世を去ってしまった。今は荒れ果ててしまった田んぼや、主を失った囲炉裏などにキャメラを向け、⼈々が残した痕跡に記憶を重ねていく。過去と現在を繊細かつ大胆に見つめた詩的ドキュメンタリー。
上映スケジュール
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