企画上映 アーカイヴ・コレクション Part 19
七里圭「ピアニストを待ちながら」
伊藤高志「遠い声」 +収蔵作品集
映画表現の可能性を拡張するふたりの映画作家の新作上映に、収蔵作品を交えて特集します。
会期:
5月3日(土祝)~5月11日(日)、5月17日(土)、5月24日(土)
※休館・休映日除く
観覧料:
大人=600円/大学生・高校生=500円/中学生・小学生=400円/福岡市在住の65歳以上の方・「わたすクラブ」会員・障がい者の方および介護者の方1名=300円 (要証明書・会員証原本提示)
映画「ピアニストを待ちながら」のみ特別料金:
一般=1400円/学生(大学生・高校生・中学生・小学生)および各種割引=700円
※以下の方が割引となります (要証明書・会員証原本提示)
①福岡市在住の65歳以上の方 ②「わたすクラブ」会員 ③障がい者の方および介護者の方1名 |
5/3土祝14:00
「ピアニストを待ちながら」 上映後トークイベント
ゲスト(敬称略):七里圭(映画監督)、伊藤高志(映像作家)
※トークイベントのみの参加は無料
映画の「実験」
福岡市総合図書館には多くの作品を収蔵しており縁の深い映画作家である七里圭さんと、伊藤高志さんの新作をシネラで上映します。伊藤高志さんの『遠い声』、七里圭さんの『ピアニストを待ちながら』ともに、そこには、軽やかな「実験」を見ることができます。
七里圭さんは、16歳で撮った『時を駆ける症状』が、第8回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)に入選し大島渚に激賞されました。その後、映画の助監督を経験されました。他の監督の演出を誰よりも間近に見る助監督の立場から映画監督に至るステップは、ひとつの王道です。その後、七里さんは多様な表現者とのコラボレーションを重ね、特別な映画作品を生み出しています。昨年シネラで上映した『眠り姫』は七里監督の代表作のひとつです。
伊藤高志さんは、九州芸術工科大学(現・九州大学芸術工学部)在学中に、当時教授であった実験映画の巨匠・松本俊夫を驚かせたい!というモチベーションで制作した『SPACY』が世界中で高い評価を得て注目を浴びます。その後もコンスタントに作品を発表し続け、2024年にはアメリカのアカデミー・フィルム・アーカイブにて「Takashi Ito: Animating Spirits」と題された特集上映が行われました。
ふたりの近年の制作に共通しているのは、建築家や演劇人、ダンサーといった映画のプロフェッショナルとは少し異なる領域の表現者と協働し、映画の新しい文法を探ろうとされていることです。その先には、これまでにはなかった映画の語り=ナラティブの更新があります。
実験的な映画を見ると、少し感覚が研ぎ澄まされることがあります。上映が終わって外に出たときに、映画を見る前とは風景が違って見える、見えなかったことが見えてくる。今回のふたりの特集上映で、そうした経験を生んでくれる映画の魅力に浸ってもらえたらうれしいです。
5月3日には、どんたくのさなかですが、おふたりを招いての対談トークイベントを催します。先鋭的とか実験とかいうと身構えてしまうかもしれませんが、気になった作品をひとつでも、リラックスしてご覧になってみてください。
(学芸員・杉原)
七里圭監督作品
5/3土祝14:00 5/4日祝11:00
5/5月祝14:00 5/6火休14:00
5/9金14:00 |
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ピアニストを待ちながら
Waiting for the Pianist
《特別料金》
大人1400円/学生および各種割引700円
©合同会社インディペンデントフィルム/早稲田大学国際文学館
2024/日本(インディペンデントフィルム)/カラー/61分/デジタル
脚本:七里圭
出演:井之脇海 木竜麻生 大友一生 澁谷麻美 斉藤陽一郎 |
ガラスの向こうは明けない夜。自動ドアはいつでも開くが、どういうわけか外には出られない。どこにも行けない理不尽な状況で、居合わせた男女5人は、なぜか芝居の稽古に興じ始める。真夜中の図書館で起きる軽やかな不条理劇。本作は、早稲田大学に開設された村上春樹ライブラリー(早稲田国際文学館)の開館記念映画として委嘱され、製作された。
5/3土17:00 5/11日11:00
七里圭短編集
(計85分/特に表記のないものデジタル上映)
「時を駆ける症状」
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時を駆ける症状
Existence Flicker Symptom
1984/24分
Untitled for Cindy
2003/20分
夢で逢えたら
What We Do is Secret
2004/20分/35ミリ
Aspen 一本道編・白樺編
Aspen
2010/14分
La Boussole
2021/8分 |
5/5月祝11:00
サロメの娘 アナザサイド(in progress)
Salome’s Daughter / Another Side (First Fruits)
2016/日本(charm point)/カラー/70分/デジタル
脚本:新柵未成 七里圭 音楽:檜垣智也
出演:黒田育世 長宗我部陽子 工藤美岬 飴屋法水
声の出演:青柳いづみ 原マスミ sei 山崎阿弥
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「サロメの娘」はオリジナルの散文詩。詩劇「サロメ」を、現代の母と娘と不在の父の物語に読み替え、書き下ろされた。このロング・テクストは、まず多声の朗読で録音され、音響作品(ミュージック・コンクレート)に構成されて、次に登場人物たちの独演を撮影したサイレント映像がモンタージュされた。
5/6火休11:00
アナザサイド サロメの娘 remix
Another Side / Salome’s Daughter – Remix
2017/日本(charm point)/カラー/80分/デジタル
テキスト:新柵未成 音楽:檜垣智也
出演:長宗我部陽子 黒田育世 飴屋法水 工藤美岬
声の出演: 青柳いづみ 原マスミ sei 山崎阿弥
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『サロメの娘 アナザサイド(in progress)』と同じテクスト、同じ朗読によるサウンドトラックを用いた2本目の映画作品。今回はナラティヴに重心を移し、母と娘、不在の父親の関係が語られる。しかし、母とは、娘とは、父とは誰なのか。その自己同一性は、多声によるモノローグ、重層化する映像と音響のはざまで揺らぎ続ける。
5/9金11:00
あなたはわたしじゃない
You Are Not Me(Salome’s Daughter / Deconstruction)
2018/日本(charm point)/カラー/84分/デジタル
テキスト:新柵未成
出演:青柳いづみ 長宗我部陽子 黒田育世
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あの晩、私は森の中で置き去りにされた。獣のマスクをしたあの人は、私のお母さん、だったのだろうか?どことも知れぬ白い部屋で、若い女がつぶやき続ける。母から娘へ継がれるカルマを断ち、アイデンティティのくびきから解き放たれるために。オリジナル散文詩「サロメの娘」の三度目の映像化。
5/10土11:00 5/17土17:00
35ミリフィルム作品(2本立て/計103分)
のんきな姉さん
My Easygoing Sister
2004/日本(のんきな姉さん製作委員会)/カラー/87分
脚本:七里圭 原作:山本直樹
出演:梶原阿貴 塩田貞治 大森南朋 梓
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姉との禁じられた愛の記憶を小説に書き、雪山で自殺しようとする弟と、聖なる夜にオフィスで残業する姉。その二人の現在に、記憶=小説がフラッシュ・バックされてゆく。雪山と都会、現在と過去という二つの空間、二つの時間が錯綜し、目覚めれば目覚めるほど夢に近づいていく、不思議な感触の長編劇場公開映画第一作。
DUBHOUSE:物質試行52
DUBHOUSE
2012/日本/カラー/16分/Fujiフィルム版
共同監督:鈴木了二 音楽:池田拓実
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2010年、建築家・鈴木了二のインスタレーション「物質試行51:DUBHOUSE」の記録映画。建築が生み出す闇を捉えるという当初の意図は、翌年3月11日の出来事により決定的な変化を被る。七里監督は、展示作品を撮影した光の部分と同じ時間の闇を冒頭に置き、その中に、鈴木が描いた被災地のドローイングを沈ませた。
伊藤高志監督作品
5/3土祝11:00 5/4日祝14:00
遠い声
Distant Voices
2024/日本/53分/デジタル
脚本・撮影・編集:伊藤高志
音響:稲垣貴士 伊藤高志
出演:郡谷奈穂 池末朱莉
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5/10土17:00
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ふたりの女性が、カメラを持ってさまようのは、人けのない港の倉庫、ひまわり畑、廃墟と化した公営住宅群。一人は不可思議な事物や自分にカメラを向け、もう一人は黒いワンピースをさまざまな場所に吊るして撮る。息を呑むような殺伐とした空気が漂いながら、映画的な技法が随所にちりばめられ、見る驚きに満ちている。
5/10土14:00 最後の天使+零へ(2本立て/計105分・デジタル)
最後の天使
Last Angel
2014/日本/33分/作家蔵
脚本・撮影・編集:伊藤高志
音響:荒木優光
出演:大谷 悠 松尾恵美 村上璃子 上川周作
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二組のカップルの不穏な関係。彼女は私の妄想なのか、それとも私の方が彼女の妄想なのか…「静かな絶望をキーワードにこの世の不条理、存在の不確実性といったネガティブイメージを魅惑的な映画として成立させようと試みた」と伊藤監督が語る。第61回オーバーハウゼン国際短編映画祭のコンペティション部門選出。
零へ
Toward Zero
2021/72分/作家蔵
脚本・撮影・編集:伊藤高志
音響:荒木優光
出演:高橋瑞乃 シンミキコ 天津孔雀 松田美和子 原田伸雄
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カメラを回しながら次第に死と暴力にとりつかれる女子学生、性に妄執しつつも死の影に怯える初老の男、男の手首を抱え、捨て場所を求めて彷徨する女。断片的な描写が織り重ねられ、複数の物語が交錯せず、しかし共鳴しながら進行する。福岡の舞踏シーンから得た感覚が加わり、新境地となった作品。
5/11日14:00
伊藤高志集A
(7作品・約50分/16ミリフィルム上映) 
「WALL」
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SPACY 1981カラー/10分
BOX 1982/カラー/8分
THUNDER 1982/カラー/5分
DRILL 1983/カラー/6分/サイレント
GHOST 1984/カラー/6分
GRIM 1985/カラー/8分
WALL 1987/カラー/7分
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5/24土17:00
伊藤高志集B
(6作品・約49分/16ミリフィルム上映) 
「THE MOON」
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悪魔の回路図 Devil 's Circuit 1988/カラー/8分
ミイラの夢 The Mummy’s Dream 1989/白黒/6分/サイレント
ビーナス Venus 1990/白黒/5分/サイレント
THE MOON 1994/カラー/7分
ZONE 1995/カラー/13分/作家蔵
モノクローム・ヘッド Monochrome Head 1997/カラー/10分 |
上映スケジュール
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