企画上映

戦後80年:アジアと日本と戦争

第2期:終戦・戦後

戦後80年の節目に、日本とアジア各国の双方の視点から戦争を見つめます。


8月1日[金]~8月3日[日]、 8月11日[月祝] 、
8月14日[木]~8月17日[日]

◎「東京裁判」を除き、福岡市総合図書館収蔵作品

観覧料: 
大人=500円/大学生・高校生=400円/中学生・小学生=300円 ※「東京裁判」のみ特別料金
・福岡市在住の65歳以上の方・わたすクラブ会員=250円(要証明書・会員証原本提示)
・障がい者の方および介護者の方1名=無料(要証明書提示)


 2025年は終戦から80年の節目になります。7月は、戦前・戦中に作られたり、後年その時期を描いたりしたアジアと日本の映画を横断的に、双方の視点が入り混じるように特集します。この時期は、政治的な意図をもって製作されたプロパガンダ映画が目につきます。ただ、個々の映画を見てみるとただ当局の意図を喧伝するだけではなかったことも見つけることができます。たとえば亀井文夫(1908-1987)による「戦ふ兵隊」(1939)は、軍部の依頼で製作されながら、描き方が厭世的という理由で当時公開中止になってしまいます。
 映画はカメラで撮影されます。レンズとフィルムという機械の目をとおしてとらえられた世界は、冷徹なまでに客観的です。撮られたものは、依頼した製作者や、時には作者の意図をも超えてしまうことがあります。これは、映画というメディアに生来備わった重要な性質です。
 3期に分けて約30本の映画を上映予定です。そんなにたくさん、遠い過去の出来事を今更古いフィルムで見るなんてと思われるかもしれません。今回の特集では記録映画だけではなく、劇映画も多く盛り込みます。そこには脚色も演出もありますし、一見戦争と関係ない作品もあります。勇ましい、もしくは疲れ切った前線を取材できたとしても、そのときの市井の人たちの暮らしというのは、しばしば見落とされます。当時のことは、時間が経ってからでないと語りえないこともあります。フィクションだからこそ伝えられる真実もあるでしょう。ある時点に正義であったことが、後年振り返って別の批判にさらされることもあります。記録された映画は、時代や見る人の解釈によって常に変化します。
 日本もアジアの国々も20世紀の後半は、社会のあらゆる側面に戦争の影響を受けつつ、映画を作ってきました。8月には「終戦・戦後」の日本映画を、9月には「その後のアジア、戦争の傷跡」と題して、アジアの映画を中心として、3つの期間に分けました。紛争や戦争はずっと続いています。そのきっかけは20世紀の戦争に端を発するものが少なくありません。7月に上映する「苦悩のリスト」「子どもたちはもう遊ばない」も、問題の源流をたどれば、当時の戦争とその戦後処理の問題がいまだに世界に影響している一例でもあります。
 遠い国の、遠い出来事が、地続きであるということと、20世紀半ば、まだ新しいメディアであった映画は負の面でも、正の面でも大きな役割を果たしていたことを知る機会になれば幸いです。   (学芸員・杉原)

8/2[土]14:00  8/14[木]14:00  3本立て上映

北京 Peking

「上海」に続いて製作された、北京の文化とそこに住む人々を記録した貴重な作品。冒頭の30分ほどが欠落している。※作品が古く、あまり状態は良くありません。ご了承ください。

1938/東宝文化映画部/白黒/45分/16ミリフィルム上映
監督:亀井文夫

日本の悲劇 
A Japanese Tragedy

戦時中のニュース映画などを素材として戦後、軍部や軍閥などを痛烈に批判する。

1946/日本(日本映画社)/白黒/39分/35ミリフィルム上映
編集:亀井文夫、吉見泰



生きていてよかった  Still It's Good to Live

原爆投下10年後の広島・長崎。被爆者の人たちをカメラに登場させ、悲惨な現実を紹介してゆく。

1956/日本(日本ドキュメントフィルム=原水爆禁止日本協議会)/白黒/48分/16ミリフィルム上映
監督:亀井文夫


8/1[金]11:00  8/17[日]11:00

東京五人男 Five Tokyo Men

1945/日本(東宝)/白黒/84分/35ミリフィルム上映
監督:斎藤寅次郎 出演:横山エンタツ、花菱アチャコ



地方の軍需工場で働いていた横山たちは、終戦と同時に焦土となった東京に帰ってきた。5人は、悪徳商人や暴力団が物資を密かに集めて金儲けを企んでいることを知り、みんなで立ち上がる。古川緑波などのコメディアンが大勢登場するコメディ映画。終戦直後の東京の様子が描かれている。

8/1[金]14:00  8/16[土]14:00

真空地帯 
Vacuum Zone

1952/日本(新星映画社)/白黒/129分/35ミリフィルム上映
監督:山本薩夫 出演:木村功 下村勉

 



昭和19年。陸軍刑務所に2年間服役していた木谷が大阪の連隊に帰ってくる。木谷は上司の権力争いに巻き込まれて一方的に罪を着せられたのだ。日本の軍隊内部を初めて本格的に描き、毎日出版文化賞を受賞してベストセラーとなった同名小説の映画化。

8/2[土]11:00  8/14[木]11:00

ビルマの竪琴  
The Burmese Harp

1956/日本(日活)/白黒/116分/35ミリフィルム上映

監督:市川崑 出演:三國連太郎 安井昌二



太平洋戦争末期。井上部隊はビルマから敗走し、終戦後イギリス軍の収容所に入れられる。水島上等兵は抵抗を続ける日本軍の説得に赴くのだが、そのまま行方不明になってしまう。原作は竹山道雄の児童文学で「埴生の宿」「仰げば尊し」などの音楽が盛り込まれ、戦争の悲しさを見事に訴える。

8/3[日]11:00  8/17[日]14:00

秋刀魚の味  
An Autumn Afternoon


1962/松竹/カラー/113分/35ミリフィルム上映
監督:小津安二郎 出演:岩下志麻 笠智衆



平山周平は妻と死別し、娘の路子と息子の和夫と三人で特に不安のない生活を送っていた。路子は24歳になり、周平の友人たちは縁談を勧めてくる。小津安二郎監督の54作目の作品で遺作。小津は、映画に軍人を登場させなかったが、本作では重要なシーンで「軍艦マーチ」が流れる。

8/11[月祝]11:00 前半/14:00 後半
8/15[金] 11:00 前半/14:00 後半

東京裁判 4Kデジタルリマスター版  Tokyo Trial

1983/日本/白黒/4時間37分/DCP上映/配給:太秦
監督:小林正樹

アメリカ国防総省が撮影していた50万フィートに及ぶ膨大な裁判記録のフィルムをもとに、名匠・小林正樹監督が5年の歳月をかけて編集、制作し、客観的視点と多角的分析を施しながら「時代の証言者」としての本作を完成させた。83年に公開され、単に裁判の記録といった域を越え、戦後38年当時の日本人に人類がもたらす最大の愚行「戦争」の本質を巧みに訴えた。

特別料金〈前半・後半入替/各回でチケット購入が必要です〉
一般=1,400円/学生(大学生・高校生・中学生・小学生)および各種割引=700円
※以下の方が割引となります。①福岡市在住の65歳以上の方/②「わたすクラブ」会員/③障がい者の方および介護者の方1名(要証明書・会員証原本提示)




8/3[日]14:00 8/16[土]11:00


海と毒薬
 The Sea and Poison


1986/日本(「海と毒薬」製作委員会)/白黒/123分/35ミリフィルム上映
監督:熊井啓
出演:奥田瑛二 渡辺謙



昭和20年、九州F市のF帝国大学医学部。ある日研究生の勝呂と戸田は橋本教授に呼び出され、捕虜であるアメリカ兵の生体解剖を手伝わされる。原作は遠藤周作。九州大学で行われた米兵の解剖事件を元に、ショッキングかつリアリズム溢れる演出が話題となった。ベルリン映画祭銀熊賞受賞。

上映スケジュール

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