企画上映
アンソロジー・フィルムアーカイブス
―アメリカ実験映画の地平へ
Anthology Film Archives: Surveying American Experimental Cinema
2月5日(木)~2月22日(日)
※休館日・休映日除く
主催:福岡市総合図書館、映像ホール・シネラ実行委員会、国立映画アーカイブ、アンソロジー・フィルムアーカイブス
◎特に表記のないもの製作国=アメリカ合衆国/デジタル上映◎上映分数は当日のものと多少異なることがあります ◎不完全なプリントや状態の悪いプリントが含まれていることがあります |
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アンソロジー・フィルムアーカイブス(以下アンソロジー)は映像作家たちが中心となって設立されたインディペンデントな組織として、“周縁の豊かさこそ文化を活気づける”という強い信念のもと、見過ごされがちな個人映画や実験的な映像作品を軸に保存・研究・上映を行う、世界的に見ても非常にユニークなフィルムアーカイブです。
第二次世界大戦後の米国では、16mmカメラの普及やスーパー8、シングル8などの登場により、個人や小規模のインディペンデントによる映画の制作が加速し、欧州の前衛(アヴァンギャルド)の影響を受けながらも、独自の実験的試みが繰り広げられました。特に1960年代のニューヨークでは、映像作家、詩人、音楽家、美術家など分野を超えた交流が活発化し、フリー・ジャズ、ポップ・アートなどの文化的潮流と共鳴しながら、アンダーグラウンド映画のムーブメントが形成されました。既成概念に縛られないラディカルな作品が次々と誕生したのです。
このような映画の重要性を誰よりも提唱し続けたのが、詩人で映像作家のジョナス・メカス(1922–2019)です。1949年、難民としてリトアニアから米国に渡ったメカスは、戦争で粉々になった希望を拾い集めるかのように、こうした作品を擁護する活動を仲間とともに展開しました。1955年に映画雑誌「フィルム・カルチャー」を創刊、1961年には作家団体による個人映画の配給組織として「フィルムメーカーズ・コーペラティブ」を始動。さらに、作品の保存・研究・上映を恒常的に行うことを目的としたフィルムアーカイブの設立に奔走します。そして1970年、メカス、ジェローム・ヒル、ポール・アダムズ・シトニー、ピーター・クーベルカ、スタン・ブラッケージによってアンソロジーは設立されました。
本企画では、ビートジェネレーションとアンダーグラウンドを繋ぐ重要人物でありながら、29歳で夭折したロン・ライスによる作品や、再評価が期待されるマージョリー・ケラーによる詩情溢れる作品など、復元によって蘇った作品だけでなく、アンソロジーで展開されている映画の形式や概念を批評的に問い直す先鋭的なプログラムを中心に、アメリカ実験映画/個人映画/インディペンデント映画を上映します。
映像表現の可能性を広げる作品群の上映を通して、映像メディアに囲まれた現代に新たな視点をもたらす機会となれば幸いです。みなさまのご来場をお待ち申し上げます。
観覧料
大人=600円/大学生・高校生=500円/中学生・小学生=400円/福岡市在住の65歳以上の方・わたすクラブ会員・障がい者の方および介護者の方1名=300円(要証明書・会員証原本提示) |
2/6金14:00 ※上映前解説:池元慎 氏(国立映画アーカイブ研究補佐員)
2/11水祝11:00
ロン・ライス作品集(1)
(3作品/65分)
花泥棒 The Flower Thief
1960/白黒/59分
監督:ロン・ライス 出演:テイラー・ミード
テイラー・ミードの演技クラス
Taylor Mead’s Acting Class
1960/白黒/3分
チャールズ・シアターでのロン・ライス
Ron Rice at the Charles Theater
1962/白黒/3分/サイレント※無音での上映
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花泥棒
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その独創性によって1960年代アンダーグラウンド映画における最重要人物の一人と目されながら、29歳の若さで夭折したロン・ライス(1935-1964)。代表作の『花泥棒』は、アメリカの風景と即興演技を活かした撮影によって、ビート・ジェネレーションの感性が最も純粋な形で表現されている。主演のテイラー・ミードは、詩人として活動するかたわら、アンディ・ウォーホル作品など数多くのアンダーグラウンド映画に出演。それらの作品に色濃く影響を受けた『コーヒー&シガレッツ』(2003、ジム・ジャームッシュ)では、象徴的にキャスティングされている。
2/7土11:00 ※上映前解説:池元慎 氏(国立映画アーカイブ研究補佐員)
2/19木14:00
詩篇23枝篇
23rd Psalm Branch
1966-1967/カラー/64分/16ミリフィルム上映/サイレント※無音での上映
監督:スタン・ブラッケージ
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1950年代から2000年代までに400本以上の作品を発表し、実験映画の可能性を押し拡げたスタン・ブラッケージ(1933-2003)が、ベトナム戦争へのアクチュアルな反応として製作した作品。戦争、死、暴力、動員などの光景を映し出した歴史的フッテージに詩篇や8mmで撮影された日常のフッテージを織り込み、特徴である神話詩的な構成を用いながら、同時代への明確なメッセージを打ち出している。
2/8日11:00 2/18水14:00
シンバイオサイコタクシプラズム:テイク・ワン
SYMBIOPSYCHOTAXIPLASM: TAKE ONE
1968/カラー/75分
監督・製作・編集・出演:
ウィリアム・グリーヴス |
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「ドキュメンタリー映画制作における倫理的側面(そしてある程度は映画全体における倫理)は、終わりのない議論や批評的な討論を生み出してきたテーマです。監督と被写体の権力関係、搾取や誤解を招く危険性(あるいはその不可避性)、客観性という幻想を助長する危うさ……しかし映画作家自身がこうした問題を作品の構造に織り込もうと試みてきたことは見過ごされがちです」(アンソロジー/ラプフォーゲル氏)
ドキュメンタリー映画制作に内在する倫理的な問いや権力関係を前景化し、それに対処する特異な方法を示す作品として、ウィリアム・グリーヴスの『シンバイオサイコタクシプラズム:テイク・ワン』を上映。大学在学中より黒人劇団で俳優として活動していたグリーヴスは、ハリウッドの製作体制に反発してカナダへ渡った後、帰国して実験的なドキュメンタリー映画作家となった。この作品は長らく劇場未公開だったが、1992年のサンダンス映画祭で上映されたのを機にスティーヴン・ソダーバーグらの尽力により配給された。哲学者アーサー・F・ベントリーが環境と人間の関係について提唱した概念「シンバイオサイコタクシプラズム」に基づき、セントラルパークで即興的に撮影される映画の制作風景を、分割画面を駆使しながら多層的に描き出している。
2/8日14:00 2/20金14:00
トム、トム、笛吹きの息子
Tom, Tom, the Piper’s Son
1969/白黒/122分/サイレント
※無音での上映
監督:ケン・ジェイコブス |
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Courtesy of Electronic Arts Intermix (EAI), New York.
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群衆による祝祭のカオスを描き出した最初期の喜劇映画『トム、トム、笛吹きの息子』(1905)を再撮影の素材として、ズームやパン、高速・低速再生といった様々な視覚的効果によって作品本来の意味を解体し、映像の多義的な細部や物質性へと視線をいざなう「構造映画」の代表作。映画表現の可能性に挑み続けたケン・ジェイコブス(1933-2025)による、ビリー・ビッツァー撮影のオリジナル版に対するクリティカルな解釈は、初期映画の再評価をめぐる国際的な議論を呼び起こした。
2/6金11:00 ※上映前解説:佐々木淳(国立映画アーカイブ客員研究員)
2/14土14:00
グリーサーズ・パレス
Greaser's Palace
1972/カラー/91分
監督・脚本:ロバート・ダウニー
出演:アルバート・ヘンダーソン、マイケル・サリヴァンほか |
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ニューヨークを拠点に反体制的なインディペンデント映画を発表し、ジョナサン・デミやポール・トーマス・アンダーソンに多大な影響を与えたロバート・ダウニー・シニア(1936-2021)によるアヴァンギャルドな西部劇。強権的な男シーウィードヘッド・グリーサーズ(ヘンダーソン)が支配する西部開拓時代の小さな町にパラシュートで舞い降りた奇妙な男(アーバス)が、不思議な力で人々に癒しを授けていく。2025年にアンソロジーによって復元された。
2/15日11:00 2/21土14:00
抽象アニメーション作品集 (4作品・26分)
オプチカル・ポエム An Optical Poem
1938/カラー/7分 監督:オスカー・フィッシンガー
ポルカ・グラフ Polka Graph
1947/カラー/5分 監督:メアリ・エレン・ビュート
呼吸 Breathing
1963/カラー/5分 監督:ロバート・ブリア デュオ・コンチェルタンテ
デュオ・コンチェルタンテ Duo Concertantes
1962-1964/白黒/9分 監督:ラリー・ジョーダン |
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ポルカ・グラフ
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ビート・ジェネレーションの影響下、瞑想的で、新技術への関心、脱物語、知的活動や芸術活動の延長線にある抽象アニメーション群。フィルムへのダイレクトペイント、切り紙やコラージュ、アナログコンピュータなどの技法で制作された。
※上映後、本プログラムをキュレーションした山村浩二氏(東京藝術大学教授、アニメーション作家)によるビデオ講演(50分予定)があります。
2/5木11:00 2/11水祝14:00
リグルーピング
Regrouping
1976/白黒/80分
監督・撮影:リジー・ボーデン
出演:ジョアン・ジョナス、バーバラ・クルーガーほか |
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ニューヨークのフェミニスト・コレクティブを考察したリジー・ボーデン(1958-)の初長篇映画。制作後に数回上映された後、出演者たちの不満を受け約40年間封印されたままであった本作は、2016年に彼女たちの許可を得ることが叶い、2022年にアンソロジーにより4K復元された。後の『ボーン・イン・フレイムズ』(1983)や『ワーキング・ガールズ』(1986)で展開されるような女性の集団性における力学がドキュメンタリーの手法で描かれる。
2/7土14:00 2/12木14:00
ボーン・イン・フレイムズ
Born in Flames
1983/カラー/85分
監督・共同脚本・製作・編集:リジー・ボーデン
出演:ハニー、アデル・ベルティほか
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社会民主主義によって起こされた解放革命から10年後の近未来ニューヨークを舞台にしたSFカルト作品。海賊ラジオ放送のDJや労働者など、ジェンダー、人種、階級を越えた女性たちが連帯し、革命後もなお残る抑圧に対峙する姿をドキュメンタリー的手法で描く。
2/5木14:00 ※上映前解説:佐々木淳(国立映画アーカイブ客員研究員)
2/15日14:00
時を数えて、砂漠に立つ
He Stands in a Desert Counting the Seconds of His Life
1985/カラー/150分/16ミリフィルム上映
監督:ジョナス・メカス
出演:ジョージ・マチューナス、ジョン・レノン、オノ・ヨーコほか |
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©1986 Estate of Jonas Mekas, courtesy of The Film-Makers' CooperativeNew American Cinema Group, Inc.
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メカスは初長篇『ウォールデン』(1968)で「日記映画」という独自の手法を確立した。本作はその続篇ともいうべき作品で、アンソロジー設立時期の1969年から1984年にニューヨークで交流した友人たちとの124の映像スケッチで紡がれている。またソーホー地区を生み出した当時の芸術運動「フルクサス」の当事者たちの記録としても貴重で、この部分に関しては本作の完成後にメカスが自ら構成した書籍「メカスの友人日記」(1989年、晶文社)を参照することで、より理解が深まろう。
2/13金14:00 2/22日11:00
ストム・ソゴー作品集 (6作品・計81分・すべて監督:ストム・ソゴーー)
ペリオディカル・エフェクト Periodical Effect 2001/カラー/10分
シルバー・プレイ Silver Play 2002/カラー/16分
ゆるやかな死 Slow Death 2000/白黒・カラー/16分
追伸 死んでしまうと思った瞬間 Ps When You Thought You are Going to Die 2003/カラー/18分
TRI カラー/9分
リピート Repeat 2006/カラー/10分 |
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シルバー・プレイ
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「映画は、できるだけ汚らわしくて、狂ってなければいけない。みんなが映画館から逃げ出して、人生にもっとましなものを望むようになるために…。僕の映画は、精神に作用する視覚的キャンディーで、最初は甘く感じるけど、次に発作を起こさせる」(ストム・ソゴー)
大阪で生まれ育ったストム・ソゴー(1975-2012)は、1993年頃からニューヨークへ拠点を移し、その後アンソロジー・フィルムアーカイブスで映写技師として働きながら制作を続けた。再撮影の手法を多用し、暴力的なまでに明滅する光とホームビデオの映像を組み合わせる独特な作風は、同時代のアーティストに大きな刺激を与えた。本プログラムでは、アンソロジーが復元を手掛けた作品群を上映。
※本プログラムには、激しい光の明滅を伴う作品があります。ご注意ください。
上映スケジュール
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